【アドバンテスト(6857)】AI半導体の成長はまだ続く?テスター増産と高い利益率の裏側
アドバンテストの好調さは、AI半導体がたくさん売れることだけでは説明しきれません。半導体が複雑になるほど検査の負担も増え、それに応える高性能テスターの販売が利益を押し上げています。
2026年10月28日発表の2027年3月期中間決算(2026年4〜9月)は、売上高8,452億円、営業利益4,568億900万円でした。今回は、増益の中身と、生産能力の拡大が今後の業績につながる条件を見ていきます。
成長の鍵は「半導体の数」と「検査の量」の両方
成長を支える需要は確認できます。ただし、需要を実際に納入できるか、高採算製品の構成を保てるかが次の分かれ目です。
会社は、AI向け高性能半導体の生産数量が増える一方、先端パッケージの採用などで半導体が複雑になり、顧客のテスター投資が続いていると説明しています。作る半導体の数が増えるうえ、検査すべき内容や工程も増える。この二つが重なっているところに、今回の強さがあります。
| 項目 | 前年同期・2025年4〜9月 | 当期・2026年4〜9月 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,267億3,300万円 | 8,452億円 | +60.5% |
| 営業利益 | 2,324億3,500万円 | 4,568億900万円 | +96.5% |
| 税引前利益 | 2,305億1,700万円 | 5,102億3,400万円 | +121.3% |
| 親会社所有者帰属中間利益 | 1,698億1,300万円 | 3,680億8,300万円 | +116.8% |
| 営業利益率(当方計算) | 44.1% | 54.0% | +9.9ポイント |
売上の伸び以上に営業利益が増えたのは、単に経費を絞ったからではありません。販管費は前年同期から336億2,200万円増えています。それでも売上総利益が2,600億9,900万円増えたため、費用の増加を吸収できました。増収が利益へつながりやすい製品構成に変わっていると読めます。
売上の伸びと営業利益の伸びを比べるには、利益率が何を表すかを押さえておくと読み進めやすくなります。 用語を自分でも確認・復習したい方には、辞典での検索と反復学習ができる「ファイ単」という選択肢があります。会員登録後にアプリを取得して利用するサービスです。
高性能SoC向けの販売が、利益率を押し上げた
上期の売上総利益率は前年同期の63.7%から70.4%へ上昇しました(当方計算)。会社が挙げる増益要因は、増収、売上構成の改善、円安です。どの要因が利益を何億円押し上げたかは、確認資料では分けられていません。
決算説明資料では、7〜9月のSoCテストシステム売上は3,533億円。GPU向けの高水準な販売に加えて、推論AIの進展を背景にASICやCPU向けも伸びました。ハイエンドSoC向けの販売が伸び、同四半期の売上総利益率は71.1%、営業利益率は55.9%になっています。「AI向けなら一様に伸びる」というより、収益性の高い用途の販売が増えたことが利益率へ表れたと捉えるのが自然です。
テスターの販売が増えると、その後の保守や消耗品にも接点が広がります。上期のサービス他部門は売上高749億6,900万円、セグメント利益208億6,600万円。設置台数の増加によるサポート・サービスと、テスト用インタフェースボードなどの販売が増えました。装置の販売だけで終わらない点も、業績の広がりとして押さえておきたいところです。
一方で、最終利益の伸びには別の要因も含まれます。当期の金融収益570億1,600万円には、戦略投資に関する金融商品の評価益541億7,100万円が含まれています。これは営業利益の外側ですから、純利益116.8%増をそのままテスター事業の成長率と読むと、実態より強く見えてしまいます。
増産は追い風になるが、能力と売上は同じではない
今後の成長経路は、顧客の半導体増産・検査負担の増加に対し、アドバンテストが必要なテスターを供給し、その納入を売上と利益へつなげる流れです。
会社はSoCテスターの年間生産能力が5,000台以上に達し、年間1万台という目標の達成も前倒しすると説明しています。自社だけで工場を抱えるのではなく、外部委託先と組み合わせて生産を増やす方針です。供給が成長の制約になっている局面では、増産体制を整えること自体が売上機会を取り込むために必要になります。
ただし、生産能力が倍になれば売上も倍になる、という計算はできません。機種ごとの価格や構成、部品調達、実際の出荷台数で結果は変わります。会社もメモリ半導体などの部品の供給不足に言及しており、需要の強さが部材コストの上昇につながる面もあります。
その準備は貸借対照表にも表れています。棚卸資産は前期末の2,317億1,800万円から3,524億2,600万円へ増加しました。需要に備えるための在庫でも、最終的に納入できなければ資金が寝たままになります。次回は売上の伸びだけでなく、在庫の増加に見合う納入と営業キャッシュ・フローが続くかを合わせて確かめたいところです。
上期の営業キャッシュ・フローは3,069億6,600万円の収入でした。投資キャッシュ・フローは2,108億8,100万円の支出で、負債性金融商品の取得が大きく含まれます。投資支出をすべて工場増設と見ることはできません。両者を足した簡易フリー・キャッシュ・フローは960億8,500万円のプラスです(当方計算)。
上方修正後も、下期は50%超の営業利益率を計画
| 通期会社予想 | 2026年7月時点 | 2026年10月修正後 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1兆7,140億円 | 1兆8,630億円 |
| 営業利益 | 8,460億円 | 9,670億円 |
| 税引前利益 | 8,910億円 | 1兆215億円 |
| 親会社所有者帰属当期利益 | 6,600億円 | 7,415億円 |
修正後の計画から上期実績を引くと、下期に必要な売上高は1兆178億円、営業利益は5,101億9,100万円です。営業利益率は約50.1%になります(当方計算)。上期の54.0%よりは低いものの、高い採算を保ちながら上期以上の売上を上げる計画です。
下期の想定為替は1米ドル150円で、上期実績の160円より円高です。部材コストの上昇もあるため、直近四半期の55.9%をそのまま先へ延ばすのは避けたいところ。今後は、高性能SoC向けの売上構成と納入拡大が、円高や部品高の負担を吸収できるかが判断の軸になります。
中間配当は49円、期末配当は未定
| 1株当たり配当 | 前期・2026年3月期 | 当期・2027年3月期 |
|---|---|---|
| 中間 | 29円 | 49円 |
| 期末 | 30円 | 未定 |
| 年間 | 59円 | 未定 |
中間配当は前年から20円増えました。ただし、期末と年間の予想は未定です。中間配当を2倍して年間予想とすることはできません。
また、会社は取得額2,800億円、1,100万株をそれぞれ上限とする自己株式取得を決議しました。取得期間は2026年10月29日〜2027年3月24日の予定です。上限額は取得済み額ではなく、成長投資とのバランスも含めて実行状況を見る必要があります。
AI需要の強さだけで選ばず、高い利益率が続く条件や増産に伴う資金負担も自分で確かめたいところです。 銘柄選びの基本や売買タイミング、リスク管理も学びたい方は、ファイナンシャルアカデミーの株式投資スクールの無料体験を確認できます。
まとめ
アドバンテストは、半導体の数量増と検査内容の増加を、高性能テスターの販売へつなげています。今回の増益は売上拡大だけでなく、製品構成の改善による粗利益率の上昇が伴った点を評価できます。
この強さが続く条件は、増産したテスターを納入し、高採算の製品構成を保ちながら部品高や為替変動を吸収することです。金融商品の評価益を切り分け、営業利益率と在庫・現金回収を合わせて追うと、成長の中身を見失いにくくなります。
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本記事は2026年10月29日までに確認した会社公表資料に基づく情報整理です。将来の業績や株価を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

