決算分析【巴川コーポレーション(3878)】減益でも中身は堅調|トナー減速と先行投資が重なった決算
電子材料や半導体関連材料、トナーなどを手がける素材メーカー、巴川コーポレーションの2026年3月期第3四半期決算が発表されました。
今回の決算は、数字だけを見るとやや評価しづらい内容となっています。
売上は横ばい圏を維持しているものの、利益は前年同期比で減少しており、表面的には「業績悪化」と受け取られやすい決算です。
しかし、決算内容を細かく見ていくと、利益減少の主因は限定的であり、全社的な競争力低下を示す内容ではありません。
むしろ、構造転換と成長投資が同時に進んでいる局面と捉えることができます。
巴川コーポレーションのように、業績の見え方と中身がズレた銘柄も含め、今週の決算評価を横断整理したまとめ記事はこちら。
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決算概要
2026年3月期第3四半期の業績は以下の通りです。
| 項目 | 2026年3月期3Q | 前年同期比 |
| 売上高 | 261億96百万円 | +1.0% |
| 営業利益 | 12億25百万円 | ▲3.1% |
| 経常利益 | 14億41百万円 | ▲2.8% |
| 純利益 | 8億22百万円 | ▲17.4% |
売上は微増を維持したものの、利益は減少という決算となりました。
ただし、この減益は
- トナー事業の市況低迷
- 新規開発事業の先行投資
という2つの要因が同時に発生したことによるものです。が同時に発生したことで、全体業績が実力以上に弱く見える構図となっています。
業績が悪く見える主因は2つに集約される
今回の決算で利益が伸び悩んだ要因は、大きく以下の2点です。
- トナー事業の減速
- 新規開発事業における先行投資
この2つが重なったことで、全体業績が実力以上に弱く見える構図となっています。
セグメント別業績
| 事業 | 売上高 | 前年比 | 営業利益 | 前年比 |
| トナー事業 | 88億円 | ▲6.8% | 5.28億円 | ▲45.8% |
| 半導体・ディスプレイ関連 | 52億円 | +3.0% | 7.35億円 | +24.0% |
| 機能性シート | 89億円 | +7.1% | 3.11億円 | 大幅増益 |
| セキュリティメディア | 29億円 | +3.9% | 2.17億円 | +10.9% |
| 新規開発事業 | 0.5億円 | +126% | ▲6.57億円 | 赤字拡大 |
セグメントを見ると、業績の見え方と実態のギャップがよく分かります。
トナー事業は「市況低迷と在庫調整」による減収・減益
今回の減益の最大要因はトナー事業です。
売上は88億29百万円(▲6.8%)、営業利益は5億28百万円(▲45.8%)となりました。
モノクロトナーの市況低迷により受注が減少したほか、顧客側の在庫調整に伴う生産量抑制が影響しています。
ただし重要なのは、品質問題や競争力低下による減益ではないという点です。
今回の不振は主に需給環境の悪化による外部要因と整理できます。
半導体関連事業はむしろ好調
一方で、半導体・ディスプレイ関連事業は好調です。
売上は52億4百万円(+3.0%)、営業利益は7億35百万円(+24.0%)と大きく伸びました。
半導体実装用テープの販売が堅調に推移したことに加え、価格改定の効果も利益を押し上げています。
現在、同社の利益を最も稼いでいる事業はこの半導体関連分野となっています。
機能性シート事業も回復
機能性シート事業も今回の決算では大きく改善しました。
売上は89億35百万円(+7.1%)、営業利益は3億11百万円となっています。
機能性不織布関連製品の販売拡大と価格転嫁の進展が、利益改善に寄与しました。
前年はほぼ利益が出ていない状態でしたが、今回は明確な回復が確認されています。
新規開発事業は将来成長に向けた投資フェーズ
もう一つの利益圧迫要因が新規開発事業です。
売上は51百万円とまだ小さいものの、営業損失は▲6億57百万円となっています。
この事業では
- iCas
- GREEN CHIP
- セルロースマイクロファイバー関連材料
などの新素材開発が進められています。 現段階では赤字ですが、これは事業失敗ではなく将来に向けた先行投資といえます。
今回の決算は「構造転換期の歪み」
以上を踏まえると、今回の決算は「業績悪化」ではなく「構造転換期の決算」と捉える方が実態に近いでしょう。
トナー事業の減速と新規開発事業の投資負担が重なり、利益が一時的に圧迫されている状態です。
一方で
- 半導体関連事業
- 機能性シート事業
といった収益事業はすでに成長しています。
今後の注目ポイント
今後の評価を左右するポイントは主に2つです。
① トナー事業の回復
在庫調整が進めば、減益幅は縮小する可能性があります。
② 新規開発事業の事業化
新素材の販売拡大が見えてくれば、現在の赤字は成長投資として評価される可能性があります。 この2点が改善すれば、既に伸びている事業の利益が全社業績に反映され、企業評価のフェーズが変わる可能性があります。
現時点では数字だけを見ると弱く映る決算ですが、中身を見ると「成長に向けた準備段階」にある企業といえるでしょう。
本記事は投資判断を推奨するものではありません。
最終的な投資判断はご自身の責任でお願いします。
